中遠広域事務組合
トップ お知らせ更新情報 中遠広域事務組合 粗大ごみ処理施設 一般廃棄物最終処分場 中遠めぐり 中遠昔ばなし ごみ探検隊 環境への取り組み リンク
トップ中遠昔ばなし > 七人立ちの大蛇(森町) ←前へ戻る

中遠昔ばなし

第90話   (しちにんだちのだいじゃ)
七人立ちの大蛇(森町)

七人立ちの大蛇(森町)

 亀久保片吹(かめくぼかたぶき)の地内に「霊是(りょうぜ)」という所があります。昔は、人をよせつけない原始林で、ゆくへ知れずになった人が、何人かあったと言われています。
 いつの時代かは、はっきりしませんが、片吹の地区に炭をやいて生計を立てている男がいました。ある日、一日仕事を休んで山芋(やまいも)掘(ほ)りに出かけました。南を流れる杉沢にそってさかのぼっていったのですが、その日に限(かぎ)って山芋は見つかりません。男は「せっかく来たのに、たとえ一本でも。」と思いながら、山奥(やまおく)に進んでいきました。
 日も暮(く)れはじめ、気づいたときは、霊是の原始林へまよいこんでいました。もう方角も出口もわかりません。男は、とほうにくれてしばらく動けませんでしたが、霊是の話を思い出すと、じっとしてはいられません。男は、はや足で里に出る道をさがし続(つづ)けました。幸い月が出たので、月のあかりをたよりにおりてくると、切り立ったがけがありました。そのがけをすべるようにしており、途中(とちゅう)にある平らな岩の上に立ちました。そこは、里人たちから大人が七人立てるぐらいの広さということから「七人立ち」と呼(よ)ばれている所でした。七人立ちから村までは長い道のりでしたが、方角も分かるし、道もあるので、やっと助かったと思いました。男は、安心してすわりこむと何もかも忘(わす)れてぐっすり眠(ねむ)りこんでしまいました。
 夜の寒さに目をさましたとき、村の年寄(としよ)りたちから聞いた七人立ちに住む大蛇(だいじゃ)のことや山に入った人をかみ殺(ころ)したり、里に出て牛や馬をくい殺したりする山犬のことを思い出して、ふるえあがりました。そして、おそるおそるふり向くと、そこにあるほら穴(あな)の中に青白く光る二つの玉のようなものを見つけました。暗い穴の中のことで、それが何であるかわかりません。おそろしさのあまり、手にふれた長い竹ざおを拾(ひろ)って、光の一つをめがけてつき出しました。すると、「ギャッ。」と苦しそうな声を残(のこ)して、二つの光は消えてしまいました。
 やれやれと思ったとたん、こんどは、下の方から犬の遠ぼえのような、うすきみ悪い声が聞こえてきました。山犬の群(む)れです。近くにある竹ざおでは、どうすることもできません。かみ殺されると思うと、身も心もちぢみます。そのときふと、獣(けもの)が火をきらうということを思い出しました。男はいそいでたき火をはじめました。山犬の声は遠のきましたが、危険(きけん)が去ったわけではありません。火が消えればおそってきます。集めたものを少しずつくべて火をともしながら夜明けを待ちました。
 夜をあかした男は、いそいで家まで逃(に)げ帰りました。そして村の人たちに、きのうからのことを話しました。すると、長老(ちょうろう)の一人がこんなことを話してくれました。
「たいへんなことをしてくれたな。七人立ちのほら穴には大蛇が住んでいるが、その大蛇は、今まで一度も人に害(がい)を加(くわ)えたことはない。それどころか、お前が眠(ねむ)っている間山犬におそわれなかったのは、大蛇が守っていてくれたからだろう。お前が竹ざおでついたのは、大蛇の目だったに違(ちが)いない。たたりがなければよいが…。七人立ちへ行って、きずついた大蛇を祭ってやりなさい。」
と…・。
 その後(ご)、男が大蛇を祭ったという話も、また大蛇がどうなったかという話も聞いた人はありませんでした。

(「森町ふるさとの民話」より)

片吹の郷   七人立ちの大蛇の立て札
片吹の郷   七人立ちの大蛇の立て札

←前へ戻る

COPYRIGHT (C) CHUEN AREA JOINT ADMINISTRATION BLOC OFFICE ASSOCIATION ALL RIGHTS RESERVED. ↑このページの先頭へ